研究概要 |
ナノ・バイオ物質におけるナノ形状と電子状態さらにはその機能との相関を調べるための、量子論に立脚した計算物理的手法による研究が進められた。電子同士の相互作用を密度汎関数法で扱った計算が主に実行され、以下の結果が得られた。 1.実空間密度汎関数法による計算コードが開発され,1000原子を越える系を扱えるようになった。それにより,今まで論争となっていた,シリコン中の複原子空孔周囲の原子緩和を決定した。 2.炭素ナノチューブと金属界面での原子構造と電子状態を明らかにした。金属元素種の違いにより,界面での原子構造が異なり,それにより,ナノチューブの電子状態が改変されることがわかった。 3.炭素ナノチューブをシリコン上に配列する可能性が見出された。ステップ端へのナノチューブの吸着は十分な吸着エネルギーを有することが明らかになり,これにより微傾斜面のステップをテンプレートとする,ナノチューブ配列の可能性がでてきた。 4.炭素ナノチューブに電子線照射等で,原子空孔の連なりを生成すると,自己修復機能が働き,5員環と8員環から成る,新たな炭素ネットワークが生成されることが見出された。この新ネットワークでの磁性発現の可能性が見出された。 5.呼吸作用の最終段階を司るシトクローム酸化酵素でのプロトン移動の機構をCar-Parrinello法による量子論的ダイナミカル計算で明らかにした。ペプチド鎖を横断する,ケト・エノール転移型のプロトン移動が見出された。
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