窒化ガリウム(GaN)系半導体を用いて、水を光分解し効率よく水素を発生させるための条件の一つとして、半導体の伝導帯端と水素発生電位とのエネルギー位置関係がある。今回、GaN/電解液系のフォトルミネッセンス強度の電界依存性により、このエネルギー位置関係を定量的に求めた。さらに、p型GaN電極は、時間と共に水素発生効率が劣化することが見出されたが、そのメカニズムについて検討した。 1、GaN系半導体の結晶成長について 有機金属気相成長法(MOVPB)によって、InGaN/GaN(In組成17%)量子井戸を作製し、室温における発光波長432nmならびに光電流スペクトルから可視領域光応答性を確認した。 2、GaN系半導体の伝導帯端と水素発生電位とのエネルギー関係について n型GaNについて、電解液のpHを変化させ、Ag/AgCl参照電極に対しフォトルミネッセンス強度が最大になるフラットバンド電位を測定した。その結果、GaNの伝導帯端は、水素発生電位よりも0.4V高い位置にあり、p型GaNでは、光励起により自発的に水を還元して水素を発生させることが可能であることが確認された。 3、p型GaNで観察された水素発生効率の劣化メカニズムについて 劣化後のp型GaN試料の正孔キャリア濃度の減少ならびに窒素ガス雰囲気下での再アニールによる正孔濃度の回復結果から、表面で発生した水素原子がGaNの表面近傍を拡散し、Mgアクセプター関連欠陥をパッシベーションする、"水素パッシベーション"が劣化の主原因であるとした。 以上の結果を下記の講演会で報告した。 1、平成17年度春季応用物理学会(4月1日、埼玉大学)鳴海他"p-GaN/電解液系における光照射電子移動"1a-YH-8、講演予稿集p.1647 2、同、森田他"GaN/電解液系におけるPL強度の電界効果"1a-YH-7、講演予稿集p.1647 3、平成17年度秋季応用物理学会(9月10日、徳島大学)森田他"GaN/電解液系におけるPL強度の電界効果-pH依存性-"10a-L-9、講演予稿集p.1303
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