研究概要 |
窒化ガリウム(GaN)系半導体を用い水を光分解し効率よく水素を発生させる条件として、1、半導体の伝導帯端が水素発生電位よりも高エネルギー側にあること。2、半導体表面上の水分解の反応サイトが高密度である。などが要求される。 平成19年度は、条件1に関して、サイクリック・ボルタンメトリー法を用い、白金電極、TiO2電極とGaN, InGaN電極の電解液中の電流電圧特性を比較検討した。その結果、白金、TiO2電極に関しては、発生した水素分子から電子が電極に移動して水素イオンに戻る逆反応が見られた。すなわち、白金についてはバイアス印加によってフェルミ面エネルギーが水素発生電位と一致し、可逆的に電子移動が起こる。またTiO2電極は伝導帯端のエネルギーが水素発生電位の上わずか0.1eV以下に位置するため、やはり可逆的な電子移動が起こると解釈される。一方水素発生電位よりも0.4eV伝導帯端が高いGaNや約0.2eV高いIn_<0.12>Ga_<0.88>N電極は、このような逆反応は生じず電極から電解液への電子移動による水素発生の一方向反応であった。 また条件2に関して、GaN系電極表面の光化学エッチングを行い、表面に転位を起点としたナノサイズのウイスカー構造を形成し、表面反応サイトの増加を目指した。実際、サイクリック・ボルタンメトリーによるとエッチングの前後で表面積増加の効果によると思われる水素発生カソード電流の増加が見られた。今後は主として水素発生反応と電極表面積との関係、さらに自発分極が存在する電極表面の化学構造との関係、高効率化と水素パッシベーションによる電極劣化の抑制を目指したTiO2/lnGaNヘテロ構造電極の特性を検討する。
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