研究概要 |
本年度は2年計画の最終年度として,メソポーラス有機シリカの特異な発光特性に基いた(1)光機能性の高い有機基を導入した新規メソポーラス物質の合成と(2)光学材料への応用の基礎検討を重点的に取り組んだ。 (1)新規結晶状メソポーラス物質の合成 昨年度までに報告したビフェニル,ターフェニル,ナフタレン,アントラセンに加え,今年度新たにピレン,フルオレン,カルバゾールを含むメソポーラス物質の合成に成功した。これらのメソポーラス物質は,いずれも可視域に吸収(〜400nm)及び強い蛍光(370-520nm)を示すため,発光素子や太陽光を利用したエネルギー変換素子への応用を図る上で極めて重要な成果となる。 (2)光学材料への応用の基礎検討 ビフェニル,アントラセン,カルバゾールを導入したメソポーラス物質を発光層とする電界発光素子を作製し,発光特性を調べた。その結果,電子及びホール注入材料と組合せることで,発光強度や寿命が不十分ながら,電界発光を確認することができた。発光波長は有機基の種類に応じ調整が可能であり,またドーパントへのエネルギー移動により幅広い波長の発光が可能である。 有機基導入メソポーラス物質の光捕集機能を調べた結果,本物質は光を効率的に捕集し,尚且つそのエネルギーをほとんどロスなく細孔内色素へ移動できることが分かった。また,細孔内の微量(0.5mol%)の色素への効率的な(ほぼ100%)エネルギー移動が起こることから,メソポーラス骨格内での励起エネルギーホッピングが起こっていることが示唆された。 これらの知見は,本物質が発光素子のホスト材料,人工光合成の光捕集アンテナ材料として優れた特性を有しており,光機能材料への応用が大いに期待できることを示す。
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