研究概要 |
本研究では,簡便な操作によって多数の微量液体を定量的に扱うことを可能とするマイクロデイスペンサーを開発し,これを並列化してナノリットルからピコリットルの容積のマイクロ・ナノリアクターアレイを構築することを目的とした。本年度の主要な検討結果は以下のとおりである。 (1)物性の異なる各種液体とディスペンシングに適した流路構造およびその操作性の関係の解明 前年度に引き続き,各種スケールおよび形状のディスペンシング構造を試作し,種々の液体のディスペンシグの実験を行い,操作圧力,秤取時間,秤取再現性等について検討した。本年度は,特に,主流路と枝流路に段差をつけることの有効性を明らかにした。 (2)表面局所修飾法の開発 本秤取法では,流路表面の性質を局所的に改変することが重要である。そこで,前年度に提案した新規な方法を発展させ,単一粒子をウェルでトラップし,その後融解するという新規な手法の開発に成功し,種々のサイズ・形状の修飾が可能であること,修飾後の表面平滑性が保持されていること,流路表面の局所に特定の官能基が導入されており,これを用いて細胞の選択的な付着(パターニング)などの展開も可能であることを実証した。この方法は,単に流路に微粒子懸濁液を導入するだけで,その構造に依存して表面の一部を化学的に修飾することが可能であるため,今後,種々の応用が期待できる。 (3)マルチディスペンサーを用いたマイクロ・ナノリアクターアレイの構築 マイクロディスペンサーを集積化させた新規なマイクロリアクターアレイに関連して,昨年度開発した微小アルギン酸ゲルを用いた細胞培養用アレイの特性評価,を作製するためのデバイス,試料溶液を指数的に(10倍〜1000倍)希釈できるグラジエントアレイの提案と実証,細胞の薬剤耐性のテストが可能な2次元グラジエントアレイを作製し,2種の抗生物質に対する耐性評価に利用できることも示した。
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