研究分担者 |
藤原 祺多夫 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (90090521)
伊藤 久央 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (70287457)
栃木 憲治 株式会社東京インスツルメンツ, 商品開発室, 室長
中野 信夫 理研計器株式会社, 研究部, 副部長
小林 幸太 北斗電工株式会社, 研究開発部, 研究員
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研究概要 |
ナノチャンネル薄膜はナノメートルオーダーの均一な細孔構造を有するシリカ薄膜であり、広大な比表面積を有している。また、個々のナノチャンネルは棒状ミセルを鋳型としており、内部に疎水環境を有している。本研究課題では,ナノチャンネル薄膜を有機溶媒に代わる分子認識空間・分子捕集場として利用し,発光型および水晶振動子型のナノチャンネルセンサの開発に着手した。これらのセンサでは3次元的に集積されたナノ界面を有しており,これまでの分析デバイスとは一線を画した高感度かつ高選択的な物質検出特性が期待できる。 発光型ナノチャンネルセンサの開発では,化学物質の選択的検出能を向上するための方法を確立するとともに実試料の測定を行い,検知特性の評価を行った。特に酸性雨の影響等により土壌から河川等への流出が懸念されるアルミニウムを検出対象とした。ナノチャンネル薄膜内に発蛍光性キレートおよびマスキング剤をともに含浸することにより,高選択的な金属イオンの検出に成功した。さらに,河川水中のアルミニウム濃度をICP-AESと同様の定量値を得ることに成功した。これにより,本センサを用いることで,測定者は前処理,濃縮,マスキング剤の添加といった溶液調製を一切せずに環境試料中の物質濃度を計測可能であることを実証した。本研究で示したセンサの検出原理は,環境試料のみならずヒト血清や血液中化学物質の迅速定量に応用可能である。 また,ミセルを含有したナノチャンネル薄膜内への物質捕集機構を蛍光プローブ法,X線回折,フーリエ赤外反射吸収スペクトル等によって検討した。その結果,薄膜を水溶液中に浸漬することで,チャンネル内に水分子は浸透するがミセルは殆どチャンネル外に溶出しないこと,薄膜のナノ構造に変化がないことが明らかになった。また,アニオン性の有機物はカチオン性ミセル最外郭,いわゆるイオン性界面領域に捕集され,その分子運動性が浸漬時間とともに高くなることが明らかとなった。次年度は,これらの結果をもとにセンサの最適化を図る。
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