研究概要 |
本研究は,公共財供給,環境汚染,情報流通などに見られるさまざまな社会的,経済的ジレンマについて,ゲーム理論における「安定集合」の概念を用いて,それを回避するための制度設計を行うことを目的としていた。当初は,武藤を代表者とし,大和,肥田野を分担者とする3人の体制からスタートし,武藤が安定集合を用いたジレンマ解決のゲーム的分析,大和が制度設計とその実験による検証,肥田野が各主体の効用の変化のジレンマ解決に与える影響を分析した。その後,本研究を進める上では,ジレンマの問題の社会調査や各種統計・計量データによる把握,ジレンマ解決制度の歴史的な考察が必要不可欠であるとの認識が生まれ,樋口,山室が新たに加わった。 本研究の成果は以下のとおりである。まず,ジレンマ的状況として,新技術の特許のライセンスの問題,公共財供給の2つのケースに絞り,主体が先見性を持って行動する場合の安定な状態を安定集合の考えを用いて理論的に明らかにした。その結果をもとに,さらには,社会調査などから得られたデータ,ジレンマ解決制度の歴史的な考察を踏まえて,新技術の過剰ないしは過少な拡散,公共財供給におけるフリーライドを解決する制度の設計を行った。さらに,被験者を用いた実験および計算機を用いた実験を行い,主体の提携形成行動により理論の予測どおりには制度が機能しない点を明らかにするとともに,実験結果に基づき,主体間の提携形成行動を明確に取り入れた制度設計を行った。
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