研究概要 |
化学プラントの安全は,潜在的危険の同定,潜在的危険の影響(伝播)評価,その対策からなるプロセスハザード評価により,独立防御階層を設計することによって作り込まれる。しかし,設計されたプロセスおよびプラントは、そのライフの中で様々な変更が行われ、本来,変更が行われる度に,プロセスハザード評価を実施し,その結果を再び防御階層設計や,運転,保全,生産計画等のエンジニアリングにフィードバックしてゆく必要がある。しかし、既往のプロセスハザード評価手法では,再利用性,同定-評価-対策立案に対する透明性が確保されていないことから,ライフサイクルを通じた安全管理には不十分である。本研究は,明確なプラント構造体の階層化手法を用いてモデル化を行い,それに基づき潜在危険の同定,潜在危険の影響(伝播)評価,対策の立案を可能とすることで、プロセスハザード評価の実施手続きの透明性を確保すると共に,伝播範囲の設定に対する論理性を高め,伝播範囲の設定根拠や対策根拠の関連付け,独立防御階層設計との明示的なリンク可能とする仕組みの検討を目的としている。 本年は、ベテランのエンジニアが行った、モデル・プロセスのプロセスハザード解析(HAZOP)結果を用い、それをトレースしながら潜在危険の同定、伝播範囲の導出、対策の立案の過程を同定することで、用いられた論理・根拠をプロセス構造情報と関連付けて解析を行った。これにより、エンジニアが、初期想定異常に対して、プロセス構造情報のアブストラクションを用いて、プロセス状態の遷移として、異常伝播を捉えていることが明らかとなり、プロセスの繋がりを表現する構造情報と、各機器クラスが持つプロセス状態変数伝達論理を組み合わせることで、エンジニアが暗黙的に行っている、初期想定異常から、特定の機器までの異常伝播を、論理構造として推論することを可能とし、この推論エンジンをベーストした支援環境の仕様策定を行った。次年度以降は、この仕様をベースとして実装及び検証を行ってゆく。
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