研究概要 |
昨年度は、大規模なネットワークシステムを解析するために、階層化ネットワーク(オーバーレイ)を構築し、上位のエリア層、下位のノード層のそれぞれにおいて、酵素反応系フィードバック機構を取り入れたルーティングアルゴリズムを考案し、経路の障害を想定し、任意の時刻にあるノード間の通信帯域を減少させて、設計したルーティングシステムの耐障害性(フォルトトレランシー)を調べた。その結果、障害に対し、臨機応変に途中経路が変更され、パッセージの平均化も保持できた。ランダムネットワーク構造、スケールフリーネットワーク構造のいずれにおいても、SPFやECMP(Equal Cost Multi Path)に比較して、耐障害能力が高いことが明らかになった。 今年度は、まず、36個のノードから構成されるIPネットワークを用いたネットワーク障害(ノード間の通信帯域障害を仮定)実験を行った.ネットワーク内の3箇所のノード間リンクの最大通信速度を順次,10分の1に,また,順次,障害を回復させた場合の,各データパケットの送信時間推移と送信経路を調べた.その結果,障害時においてもデータパケットの送信時間の増加はほとんどみられず,また障害回復後に,速やかに送信時間推移がほぼ一定になった. さらに,大規模ネットワークに提案アルゴリズムを適用するために,オーバレイネットワークを想定した.具体的には,6個のノードを束ねる6個のエリアネットワーク(オーバレイネットワーク)においても,上記と同様のルーチングアルゴリズムを適用する(階層型適応ルーティングアルゴリズム).同様のネットワーク障害実験を行ったところ,階層型適応ルーティングアルゴリズムは,階層型でない適応ルーティングアルゴリズムに比べて,障害に対する応答がはやく,データパケットの送信時間の乱れもほとんどなかった.そこで,階層型適応ルーティングアルゴリズムを,エリア内に6個のノードを持ち,30個のエリアから構成されるスケールフリーエリアネットワーク(計180個のノードネットワーク)に適用し,2864個のデータパケットの送受信を行わせ,各データパケットの送信時間推移を調べた.その結果、小規模のネットワーク(6個のエリアネットワーク)と同様の結果が得られ,提案した階層型適応ルーティングアルゴリズムの有用性が明らかとなった.
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