研究概要 |
近年,医療事故が深刻化しており,事故防止のための方法論の確立が急務となっており,厚生労働行政においても最重要課題の一つとして挙げられている.これに対応するには,標準化をはじめとする質マネジメントシステム(以下QMS)の整備,および質マネジメントを推進するために必要な教育体制を構築することが必要である.QMSを構築するためには,ISO9001や病院機能評価の評価項目を利用できる.しかし,それぞれに得失があるために,双方に取り組む病院も出てきている.しかし,それぞれが別の活動になっていたり,二重の活動が行われるなど,有効な活動になっていないのが現状である. 本研究では,病院機能評価の評価項目とISO9001を互いの利点を生かして統合し,医療の質向上が効率的に進められるような医療のQMSを構築することを目的とした.そして,それを実際の病院に適用し,医療の質向上,業務の効率化にどの程度有効かを明らかにした.本研究では,医療業務と医療事故などの医療の質の状況に関する調査を行うとともに,ISO9001と病院機能評価に関わる活動の調査を行い,両者を統合した医療のQMSのモデルの原案を作成した.また,この原案をいくつかの病院に適用し,適用上の課題を明らかにした.さらに,2年間の適用結果をもとに,ISO9001と病院機能評価を統合した医療のQMSの提案を行った.特に,質保証体系,標準化と文書化,組織構造の検討方法,医療安全管理システムについては,実運用し,その有効性を確認した. 本研究の成果により,先に述べた医療界の質マネジメント体制の不備を解消することができ,医療事故の防止など医療の質向上が図られ,安全な医療サービスを受けられるという点で多くの国民が恩恵を受けることになる.しかし,モデルの導入・推進方法については十分な検討が行えなかったので,今後の課題である.
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