研究概要 |
本研究では,病院機能評価の評価項目とISO9001を互いの利点を生かして統合し,医療の質向上が効率的に進められるような医療の質マネジメントシステムを構築すること,それを実際の病院に適用し,医療の質向上,業務の効率化にどの程度有効かを明らかにすることを目的とした.平成16年度においては,日立水戸総合病院をモデルとして,医療業務と医療事故などの医療の質の状況に関する調査を行うとともに,ISO9001と病院機能評価に関わる活動の調査を行い,両者を統合した医療の質マネジメントシステムのモデルの原案を作成した.平成17年度においては,この原案を日立水戸総合病院に適用し,適用上の課題を明らかにした.また,他のいくつかの病院において,病院の特性を考慮しながら,各病院でどのような質マネジメントシステムを構築すべきかを明らかにした.平成18年度においては,2年間の適用結果をもとに,ISO9001と病院機能評価を統合した医療の質マネジメントシステムを完成させた. 本研究では,医療機関におけるQMSモデルを提案し,その有効性を確認することができた.約9300ある病院のうち約2300病院が医療機能評価を受審しており,それらの病院に対して有用なQMSモデルを提示することができた.本研究の成果により,医療界の質マネジメント体制の不備を解消することができ,医療事故の防止など医療の質向上が図られ,安全な医療サービスを受けられるという点で多くの国民が恩恵を受けることになる.また,医療機能評価受審の機会を利用して質マネジメントシステムの構築が可能となり,形式的な活動や二重の活動を防止することができ,医療業務の効率化につながる. 本研究の実証過程を通じて,QMSモデルの導入・推進に様々な困難が生じることがわかった.より効率的,効果的な導入・推進の方法論を確立することが今後の課題である.
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