研究概要 |
本研究では,低温環境で使用できる核磁気共鳴映像装置を開発し,海水飛沫着氷内のブライン排水路を可視化することが目的である.本年度は3年計画の2年目に当たり,主に以下の5つの研究活動を行った. (1)平成16年度に取得した海水飛沫着氷の3次元データを用いて,サンプルの採取場所の違いによるブライン排水路の発達の違いについて解析を行った.さらにブラインが排水された空隙にドデカンを注入し,開いたブライン排水路の可視化を行なった. (2)厳冬期に石狩市から稚内市にかけての日本海に面した港湾設備において,海水飛沫着氷の実態調査を行った.その結果1月上旬から2月下旬までの間に防波堤灯台に発達した海水飛沫着氷のサンプルを取得した.サンプルは車載型冷凍庫により採取時の温度環境を極力変えずに低温室に運搬し,密度,塩分濃度等を測定するとともに本年度の可視化実験に用いる試料とした. (3)平成16年度に開発した永久磁石を静磁場として用いたポータブルMRIを低温環境下で稼動させるため,改良を行った.永久磁石は温度によって磁場にゆがみが出るため,補正を行なうシムコイルを開発した.これにより低温室内で海水飛沫着氷を模した積雪のサンプルで画像を取得することに成功した.さらにコイルから発熱により雪氷サンプルが変態しないように改良した. (4)(3)のポータブルMRIで高空間分解能の3次元画像を高速で撮像する手法(強制回復法)の開発を行なった.この手法により,氷(信号なし)とブライン(信号あり)で構成される物体の内部構造を,従来の半分の計測時間で,1.5倍以上の信号対雑音比で撮像できるようになった. (5)海水飛沫着氷の3次元構造データから有効な情報を得るため,多孔質材の構造解析システムを元に新たなデータ処理システムを開発した.次年度はこれを用いて平成16,17年度に採取した海水飛沫着氷の構造解析を行う.
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