研究概要 |
本研究では,低温環境で使用できる核磁気共鳴映像装置を開発し,海水飛沫着氷内のブライン排水路を可視化することが目的である.本年度は3年計画の3年目に当たり,主に以下の5つの研究活動を行った. (1)平成17年度に低温室内で稼働できるように改良したポータブルMRIを用いて,海水飛沫着氷内のブライン排水路を撮像した.撮像にはスピンエコー法を用い,16回信号積算することにより空間分解能180μm,マトリックス128^3の高空間分解能3次元画像を取得した. (2)前年度開発した強制回復法を低温室用ポータブルMRIに導入するため,同型のポータブルMRI装置で指骨の骨梁構造の可視化を行ない,海綿骨内部構造を従来の半分の計測時間,1.5倍以上の信号対雑音比で取得・解析することが可能となった.また強制回復法を当該のMRI装置に導入し海水飛沫着氷の可視化に応用することを試みたが,装置の改良とオペレーション技術の向上を要するとの結論に至った. (3)海水飛沫着氷を低温室で再現するため,塩水を間欠的に供給し,積層状に着氷を成長させる実験装置を制作した.人工的な海水飛沫着氷を用いたMRI画像の解析により,着氷内にブラインが集中する領域が存在することが明らかとなったが,ブライン排水路が明瞭に形成されるには至らなかった. (4)多孔質材の構造解析システムを海水飛沫着氷のブラインの3次元構造の解析に用い,当該研究で採取した海水飛沫着氷の3次元データの解析を行った.試料内のブライン排水路を分離したのち,排水路長,Structure Model Index,節点数などを求め着氷の内部構造を明らかにした. (5)低温室において親水性・撥水性を有する高分子膜材に対する着氷力の塩分濃度依存性を計測し,ブラインの着氷界面への滞留が着氷力の大幅な減少をもたらすことを示唆した.この傾向は超親水性フィルムにおいて顕著であった.
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