研究概要 |
本研究では、新たに低温室内で使用できるポータブル核磁気共鳴映像装置を開発し、灯台から採取した海水飛沫着氷内のブラインの3次元構造を可視化し、構造解析を行うことを目的とした。MRIは原子核の磁気モーメントを利用して信号と位置情報を計測する手法であり、人体内部を映像化する断層撮影技術としてここ数年目覚ましい発展を続けている。 本研究では冬季に北海道日本海沿岸の浜益(石狩市),厚田(石狩市),豊岬(初山別村)の防波堤灯台において梅水飛沫により実際に成長した着氷資料を採取するとともに,浜益北防波堤に設置した模擬灯台の着氷の発生,成長,消滅を観察した.採取した着氷は直ちに低温室に輸送され,本研究で開発した低温室用MRI装置により内部の排水路の3次元構造が調べられた.この結果,すべての海水飛沫着氷で内部に排水路のネットワークが発達していることが確認された.この中には海永飛沫と一緒に飛来し取り込まれた気象着雪も含まれていると推定され,場所によっては粗目雪状の着氷と見られる箇所もあったが,その場合も内部に閉じこめられたブラインを排水するには十分な空隙があった.これはつららや雨氷,淡水によるしぶき着氷には見られない特徴であった.本研究ではさらに連通孔の3次元構造を解析するソフトを用いて,このブライン排水路の連結性の解析を行った. 一方,海水飛沫着氷の観察および低温室での実験からは,撥水性材料のみならず超親水性材料の上でも着氷の発生,成長が抑制されることが見いだされた.これは真水による実験とは異なった傾向であり,本研究で確かめられた排水路ネットワークによりブラインが着氷と材料の界面に供給きれていることが示唆された.
|