研究分担者 |
纐纈 一起 東京大学, 地震研究所, 教授 (90134634)
笹谷 務 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10002148)
古村 孝志 東京大学, 地震研究所, 助教授 (80241404)
畑山 健 独立行政法人, 消防研究所, 主任研究官 (00358798)
神野 達夫 広島大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80363026)
|
研究概要 |
2003年十勝沖地震の際に苫小牧市での石油タンクが長周期地震動によりスロッシングを起こし,浮屋根式タンクとしては1964年新潟地震以来39年ぶりの全面火災の一因となった.長周期地震動は堆積層が厚い平野部で顕著な増幅を受ける.本年度は長周期地震動の増幅にもっとも影響する深い地盤構造,特にS波速度構造の決定に重点を置き,苫小牧市と周辺地域の勇払平野で微動のアレー観測と解析を行った.その結果,以下の知見が得られた. 1)苫小牧から鵡川までの海岸線沿いに8箇所で微動アレー観測を実施し,おおよそどの地域でも位相速度0.2km/secから2km/sec(0.18Hz)程度までの分散曲線を求めることができ,その逆解析により表層から地震基盤に至る深部までのS波速度構造が明らかになった.2)基盤深度は苫小牧市内で一旦浅くなるが,その東西で深くなる傾向があり,これは既往の地質学的モデルなどと調和的である.3)石油タンクの火災が発生したIDMでは7〜8秒付近の増幅率が他の地点に比べて大きくなることが,簡単な1次元問題としても理解される.しかしながら,平野部の構造は3次元の不規則構造になっており,次年度に3次元モデルの作成と数値シミュレーションを行う. また,長周期地震動問題の原点ともいえる新潟平野において長周期微動の予備的観測を行い,沿岸部と内陸部での大きな特性の違いがあり,地震動との強い相関があることを把握した. 東京湾沿岸部での長周期地震動に関しては2004年紀伊半島沖地震および2004年新潟中越地震記録を用いた各地の地震動比較から,東京湾沿岸部で長周期地震動が顕著となること,特に千葉県沿岸部で周期10秒を超える地震動が卓越することが分かった。 なお,16年度繰越金により新潟平野での予備観測記録の整理と解析が実施でき,内陸の阿賀野市平野部まで厚い堆積層(Vs500m/s〜700m/s程度)の存在が確認され,17年度観測実施計画に反映させた.
|