研究概要 |
本研究においてフィールド観測と嶺雪の融雪実験、熱分析などの調査研究解析を行い、以下のような成果が得られた。 ・日本における酸性雪の実態をあきらかにするため北海道と本州の数カ所で積雪観測を行った。また長岡市では毎日の降水の採取を年間を通して実行した。これらの採取降水の化学分析を行った結果、酸性物質の分布、および融解特性の地城差および標高差が把握できた。 ・融雪時のイオンの挙動を推定するため、融雪水の熱分析を示差走査熱量計によって行った。結合水と自由水の融解温度、融解エネルギーのイオン種の種類、濃度による相違を分析し、酸性物質の融解・凍結のしやすさとの開連の検討を行った。 ・冬季降水の形態の違いによるイオン濃度特性を調べるため、降水をあられ、雪、雨に分類した。それぞれの主成分イオン濃度は特徴ある差異を示した。 ・pH値の背景にある大気化学系を検討するため、大気中のSO_2やNO_2の酸化に主役となるOHラジカルと密接な関係にある降水のH_2O_2濃度および微量重金属元素の測定を試みた。H_2O_2濃度測定装直は幾つかの基本パーツを購入し組み立てるもので、かなりの工夫と時間を費やした。2004年10月、新潟県中越地震が起こり、研究遂行が遅れた。しかし、その後、H_2O_2濃度の測定が可能になり、興味ある結果が得られつつある。長岡市における冬季の降水中のH_2O_2濃度は、日中、高い値を示した。また,降水量の増加に伴い,H_2O_2濃度は減少する傾向が見られた。NO^-_3,SO^<2->_4濃度とH_2O_2濃度との関係を調べた結果,一定の傾向が見られたものの,特に明確な類関関係を得られなかった。
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