研究概要 |
本研究課題で得られた実績の概要は次のとおりである。 (1)HDAC2はIgM H-chain, L-chain geneの転写の促進、IgM H-chain pre-mRNAの膜結合型から分泌型へのスイッチングの促進の他、H-chain, L-chainの翻訳の促進および安定性の増大などの各ステップで一括して免疫グロブリン量をコントロールすることを明らかにした。 (2)GCN5欠損は増殖速度の大幅な遅延(doubling time:12hr→17hr)、G1/S transitionの障害、DNA合成能の低下、アポトーシス細胞の増加などを伴うことを明らかにした。 (3)GCN5欠損株で、細胞周期関連遺伝子群、bcl-xL、cdc25B、cyclinA, D3、DP-2、E2F-1,3、4、6、p107、PCNA(以上の減少)、bcl-2、cyclin D2,G1、HDAC4、p27(以上の増加)などの遺伝子発現レベルが変動した。GCN5欠損で変動したHDAC4及びPCAF欠損株の解析結果から、PCAFがGCN5機能の一部を補償しており、GCN5は直接これらの因子群の遺伝子発現を制御していることが示唆された。 (4)クロマチンアセンブリーファクターでありヒストンシャペロンであるCAF-1,ASF-1欠損DT40株は酵母や植物と違って致死性を示し、高等真核細胞の生存に必須であることを初めて明らかにした。 (5)HIRAはN-末端のWDリピートでCAF-1p48と、C-末端のLXXLLモチーフでHDAC2と結合すること、およびHIRA欠損DT40株は野生株と比較して増殖速度が低下し、これはそのN-末端領域に基づくことを明らかにした。
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