研究概要 |
1.GCN5欠損DT40株においては、E2Fファミリー、サイクリン群、PCNAやc-mycなどの細胞周期制御関連遺伝子の発現に大きな変化が認められ、GCN5がこれらの遺伝子の発現を一括制御することによって、細胞周期を統一的に支配していることを明らかにした。 2.トポイソメラーゼ阻害剤であるエトポシド処理ではGCN5欠損DT40株も野生株もアポトーシスが誘導されて死滅するのに対して、PMA/イオノマイシン処理では野生株は死滅するが、GCN5欠損DT40株においてはアポトーシスが誘導されないという顕著な相違があることを初めて明らかにした。 3.GCN5欠損DT40株では、bcl-2,bcl-xLの他、PKCファミリー、カスパーゼファミリーや種々の転写因子の遺伝子発現に変化が生じていた。特に、アポトーシスの有力な制御因子であるPKCファミリーは大きな発現変化が認められ、GCN5がPKCファミリーの遺伝子発現を制御するkey factorである可能性が強く示唆された。 4.HIRA欠損DT40株の解析から、HIRAのN-末端半分とC-末端半分は、細胞周期関連遺伝子群の転写制御に関して、それぞれ促進と抑制という逆の役割を担い、細胞周期・増殖をコントロールしていることを初めて明らかにした。 5.HIRAはそのN-末端領域のWDリピートを介して、p18遺伝子のプロモーター領域と相互作用して、その転写を制御していることを明らかにした。 6.HDAC-2はIgM H-chain geneの発現をコントロールすることはすでに明らかにしていたが、HDAC-2は直接、IgM H-chain geneの関与するクロマチン構造を変化させるのではなくて、転写因子であるPax-5,EBF,E2A遺伝子の発現制御を介して、IgM H-chain geneの発現をコントロールしていることを明らかにした。
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