研究概要 |
本年度では、MHC領域における個々の遺伝子における多型情報をさらに得て、多様性情報からそれら分子の機能を明らかにする研究の流れを確立するために、TRIM遺伝子領域のゲノム塩基配列を複数種類のHLA領域がホモ接合体のゲノムDNAならびにその他の霊長類ゲノムDNAを用いて決定し、既知の多型情報を含めた多型解析を実行した。まずHLA領域に位置する4個のTRIM遺伝子(TRIM10,TRIM15, TRIM26,TRIM39)の多様性解析をヒト、チンパンジー、カニクイザルを用いておこなった。TRIM15,TRIM26およびTRIM39は3種類ともによく保存されていたのに対して、TRIM10では、ヒトやチンパンジーでは、多型が認められなっかたが、カニクイザルでは集団間に顕著な頻度さを有する25種類の対立遺伝子が同定された。さらに、3種のアミノ酸配列の比較から、TRIM10の1個のアミノ酸残基は正の自然淘汰の影響を受けている証拠を得た。これはHIV感染を防御するTRIM5の遺伝学的特徴を酷似する。さらに興味深いことに、ホジキンパ腫、ベーチェット病、帯状庖疹はTRIM10遺伝子付近のゲノム領域と有意に関連することから、これらの感受性遺伝子はTRIM10の可能性があることを突き止めた。またこれまでのHLAハプロタイプことに同定された多型情報に既知情報を含めてカタログ化し、HLA領域における多型間の連鎖不平衡の強度の分布、ハプロタイプブロックの推定などHLA領域のゲノム多様性を詳細に明らかにし、HLA遺伝子座のみならず一般的なゲノム情報より疾患感受性遺伝子特定のための戦略を確立するための基盤を構築した。
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