研究概要 |
本研究は、RNA干渉作用を利用することにより、プリオン蛋白の形成が無く、BSEを発症しない牛の作出を目的とする。初年度は、プリオン遺伝子bPrP^cのクローニングとベクターを構築し、標的ベクターを導入した体細胞からのクローン胚の品質について検討した。 1.プリオン遺伝子bPrP^cのクローニングと標的ベクターの構築 (1)プリオン遺伝子bPrP^cのクローニング ゲノムDNAからPCRでプリオン遺伝子PRN-Pをコードする全長795塩基のDNA断片bPrP^cをクローニングした。 (2)標的ベクターの構築 緑色蛍光蛋白遺伝子EGFPのC末端にbPrP^cを連結したベクター(pCMV-EGFP-bPrP^c)を構築することにより、導入細胞内でbPrP^cの指標として利用できることを確認した。 2.標的配列の選定とsiRNA発現ベクターの構築 siRNA予測アルゴリズムを利用して、bPrP^c中から標的として相応しい上位5個の配列を選んだ。siRNAの長さを19,20,21,22,23,25,27,29merとし、ベクターを構築した。HeLa細胞を利用した培養細胞系で、標的ベクターとsiRNA発現ベクターとを種々に組み合わせて活性を測定したところ、概して、U6-CACC-Bapを利用した22merのsiRNAの活性が高かった。 3.初期胚への遺伝子導入 (1)標的ベクターの選定と導入胚の作成方法の検討 標的ベクター(pCMV-EGFP-bPrP^c)を導入した胎児の肺由来体細胞からクローン胚を作成し、胚での蛍光発現効率を指標に検討した結果、融合後のクローン胚発生率は33-51%で、全ての胚で蛍光を発することを確認した。標的ベクターを導入した体細胞からクローン胚を作成するためのレシピエント卵母細胞の培養条件についてDNA損傷割合を指標に検討した結果、成熟培地にビタミンCもしくはEを添加することにより、クローン胚の品質を向上できることが明らかとなった。 (2)受胚雌牛への胚移植 発情同期化した受卵雌牛4頭に標的ベクターを導入したクローン胚(4個/1頭)を移植して、現在、経過観察中である。
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