研究課題
α-グリコシドバンドの確定のため、引き続きモデル化合物の化学合成を行った。D-Xyloseを出発原料として数段階で二環性モデル化合物を合成した。本モデル化合物は、二環性であることから、ピラン環のリングフリップを抑制し、更に糖としての酸素官能基を適位に有している。また、最大の特徴として、クロロホルムなどの非極性有機溶媒に可溶であるということがある。このことは、溶媒や基質間の水素結合によるVCDシグナルの複雑化を除くのに極めて有効であった。実際、モデル化合物の理論計算によるVCDスペクトルは、実測値と極めてよく一致しており、これにより、グリコシドバンドの理論的裏付けを実証することができた。更に、本バンドの拡張として、シアル酸誘導体への詳細な展開を行った。シアル酸は、ほ乳類に頻繁に見られる9炭糖であり、糖鎖の末端部分にキャップされるように生合成されている。インフルエンザなどの細菌は、本シアル酸を認識することが知られており、その立体化学は、これらの認識に重要な役割を果たしている。二糖を含むシアル酸誘導体のα体、β体をそれぞれ、化学合成によって調製し、VCDスペクトルの測定を行った。その結果、低波数部分には、α体、β体の明瞭な識別に有効なシグナルを発見できなかったが、カルボニル領域に極めて有効なシグナルを発見し、経験的な法則確立の可能性が示唆された。また、キラル天然有機化合物等のVCD法応用として、海草より単離された過酸化物誘導体の絶対配置決定に本VCD法を適用し、従来法では不可能な過酸化物4級炭素の絶対立体化学の決定に成功した。
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