研究課題
赤潮毒ブレベトキシン類やシガテラ毒シガトキシン類に代表される海産ポリエーテル系天然物は、特異で複雑な巨大分子構造と従来の常識を越える極めて強力かつ多様な生物活性を有することから生命科学の関連分野で注目を集めている。しかし、天然からの試料入手が困難な極微量成分であるために、その標的生体分子や作用機構について未解明の化合物が多く、それぞれの生物活性発現に必要な構造要因も明らかになっていない。本研究では、これらポリエーテル系天然物および構造類縁体の高効率的合成と詳細な構造活性相関により、ポリエーテル系天然物の多様な生物活性発現に必要な構造要因を明らかにし、作用機構解明に向けた高機能性プローブの創製と応用へと展開することを目的とした。細胞毒性ポリエーテル化合物ギムノシン-Aの構造類縁体類の合成と構造活性相関研究の結果から、分子末端の2-メチル-2-ブテナール側鎖中の共役アルデヒド構造とポリエーテル骨格の長さが細胞毒性発現に重要な構造要因であることを明らかにした。ギムノシン-Bの全合成に向けて、LMNO環部の合成ルートを確立した。電位依存性ナトリウムチャネルに対するアンタゴニスト活性を有するブレベナールの全合成を行い、提出構造に誤りがあることを明らかにした。さらに、提案した改訂構造の全合成により、ブレベナールの絶対立体配置を含めた真の構造を証明した。強力な抗真菌活性を有するガンビエル酸類の9環性ポリエーテル骨格の収束的合成を達成するとともに、AB環部モデル化合物の合成を行った。この過程で、ガンビエル酸のC1〜C12位の相対立体配置に関して再検討の必要性があることを明らかにした。
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