研究概要 |
バキュロウイルス上に膜タンパク質複合体を活性を保持した状態で再構成する技術の開発を進めた。γセクレターゼ複合体(プレセニリン,ニカストリン,APH-1,PEN2)の活性化型,G蛋白質共役型受容体(GPCR)と三量体G蛋白質の共役による高親和性受容体などの再構成につづき,GPCRおよび三量体G蛋白質とアデニリルシクラーゼを共感染することによるリガンド依存性のcAMP生成活性をウイルス上で確認した。これは,ウイルス上でシグナル伝達の相互作用が再構成されることを示唆する。また,活性型のγセクレターゼ複合体がコレステロールラフトに局在しスタチン処理により局在が変化すること,コレステロールの濃度変化に加えスタチンのプレイオトロピック効果であるゲラニルゲラニル化がラフト局在に重要であることを見出した。これは,スタチンとアルツハイマー症の関連についての新たな知見であるとともに,膜タンパク質のラフト局在が相互作用を研究する上で重要な因子であることを示唆している。膜タンパク質の相互作用を2分子FRETにより検出する際,ラフト上で膜タンパク質がクラスターを形成するとFRETの基準レベルが上昇するためS/N比が低下し,シグナル検出が困難となる。GPCRのシグナル検出系を作成するため,G蛋白質とその制御蛋白質(RGS)を用いた1分子FRETプローブを作成した。このようなバキュロウイルスによる膜タンパク質の発現系を用いて,膜タンパク質の抗体作成系を構築した。上記γセクレターゼのニカストリン(1TM)に対するモノクローナル抗体を作成し,細胞膜上の成熟型ニカストリンを認識することを確認した。またGPCRに関して,gp64トランスジェニックマウスを用いて免疫する方法とcell ELISAおよび定常発現系を用いたFACSスクリーニング系を組み合わせて,効率よく抗体をスクリーニングする方法を開発した。
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