研究概要 |
本研究では特に、バラの主要香気成分である2-phenylethanol(1)とそのβ-glucopyranoside(2)の生合成経路を明らかにし、ここに関わる低分子、酵素、遺伝子群:フェニルエタノイドシステムを解明し、これらに及ぼす光の影響を青色、緑色、赤色、白色、およびUV-LEDを用いて詳細に検討する。同時に香気発散量の低いバラ品種に対してこれらの光源を用いて発散量の増強をはかる。 1.2-phenylethanol(1),2-phenylethyl β-D-glucopyranoside(2)の生合成経路の解明(渡辺担当) 1)重水素標識仮想前駆体の合成:重水素標識したL-phenylalanineから1への仮想中間体を種々合成した。(論文発表:Tetrahedron) 2)バラへの標識体投与、標識体の分析(GC-MS, LC-MS)、LC-MSをレンタルし,使用することにより生合成反応中間体の高感度検出ができるようになった。GC-MSにより仮想前駆体投与後に生成した1およびphenylacetaldehydeの検出に成功した。 3)CYP,decarboxylase酵素活性の検出:凍結乾燥花弁および粗酵素の抽出に成功し,これらの活性を測定できるようになった。特に,PLP依存性decarboxylaseがL-phenylalanineから1への変換にとっての鍵酵素であることを示した。 2.香気発散に与える各種光源の影響(渡辺、Turnbull担当) LED光源を持つ成育箱の作成、波長ごとの照度測定装置を購入し,LED光源下での花弁からの香気発散を検討できるようになった。 3.2-phenylethanol(1)の生合成遺伝子の解明(原坦当) PLP-decarboxylase, P-45ccYP遺伝子のクローニング:既存バラESTを参考にしてバラ花弁からこれらの遺伝子のクローニングに成功した。PLP-decarboxylaseの全長を決定し,これらのバラ部位別,成長段階別の発現を検討した。 以上のように、研究は当初の予定以上に順調に進捗している。(日本農芸化学会2005年度大会発表)
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