研究概要 |
花の香気生成・発散における分子機構に関わる低分子、および生合成酵素群が、植物が受ける明暗条件によって著しくその生体内レベル、活性を変動させることを研究代表者らは見出してきた。本研究では特に、バラの主要香気成分である2-フェニルエタノール(1)とそのβ-グルコピラノシド(2)の生合成経路を明らかにし、ことに関わる低分子、酵素、遺伝子群:フェニルエタノイドシステムを解明し、これらに及ぼす光の影響を詳細に検討する事を目的として研究を展開している。昨年度までに引き続いて検討した結果,本年度の研究により、以下の成果が得られた。 1.フェニルアセトアルデヒド還元酵素の精製・単離:1の生合成前駆体であるフェニルアセトアノレデヒドを還元する酵素をバラ花弁から生成することに成功した。また,種々の揮発性ケトン,アルデヒド類を基質としてその酵素機能を解明した。その結果、本酵素がアルデヒドを選択的に還元する酵素であることをはじめて明らかにした(論文Biosci.Biotech.Biochem投稿中)。既知アルデヒド,ケトン還元酵素の遺伝子配列を基に本酵素遺伝子のクローニングを試みた。その結果新たなケトレダクターゼを発見し,その機能解析に成功した(H18.3.29特許出願)。 2.β-グルコシダーゼの同定:バラ花弁から酵素の精製に成功した。部分加水分解後、TOF-MS/MSによりアミノ酸配列の解明を試み、MASCOT検索したところ既存のβ-グルコシダーゼの保存配列を有することがわかり,全長を解明した。また,バキュロウイルス感染昆虫細胞による本遺伝子の発現にも成功し,現在機能解析をすすめている。(論文投稿準備中) 3.バラ花弁を用いた香気発散に対する明暗応答:無傷バラを用いた香気の発散実験では、花の大きさ、時期等により、発散量が異なる。これを解決すべく、花弁を水に浮かべ、香気成分発散における変動を追究した。花弁だけでも明暗に応答した規則的な発散リズムを確認したまた,青,赤,緑,白色LED光源を利用して明暗応答を検討したところ,赤色光に強く反応することがわかった。しかし,連続光照射,暗黒下では発散量が著しく減少した。遺伝子発現との関係を検討している。
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