研究概要 |
抗腫瘍薬カンプトテシン,エトポシドの結合タンパク質を決定することを目的として研究した。医薬小分子と結合タンパク質との結合能(アフィニティー)に着目し,容易に増幅可能なDNAを利用して結合タンパク質を決定するファージディスプレイ法を改良した。この方法で,リガンドとなるカンプトテシン,エトポシドをビオチン化後アビジンプレートに固定し,作成したペプチドライブラリを流してリガンド-タンパク間の親和性の高いものを選択的に得た。ここで得られたファージは,医薬小分子と特異的に結合するタンパク質のヒトcDNAをもつ可能性の高いファージになる。このcDNA配列を解析することで,その領域を含む遺伝子をゲノムデーベースから特定することを試みた。 カンプトテシンの二化合物から,オーファン受容体GPCRの一種でプロスタグランディン受容体のEP1の構造のうち,細胞内第3ループが結合部位と予測された。第1〜3ループペプチドを作成し,カンプトテシンとの各々の結合力をSPRおよびQCMで測定し,第3ループが結合部位と決定した。 誘導体エトポシドでは、細胞周期に関わる転写因子E2Fの配列が予測された。発現タンパク質との結合をSPRで解析し,結合タンパク質であることを決定した。されにレポーター遺伝子を使った細胞実験で,E2Fがエトポシドの受容体であることを証明した。 これらの結果は,細胞などを使ったこれまでの研究からは見出すことの出来なかったものであり,ゲノム解析による成果の一端であると評価される。
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