研究概要 |
サンゴがよく生存し、周辺地域では唯一配偶子を大量に生産できる個体群が存在している慶良間列島でのサンゴ群集の維持力と、サンゴが激減している沖縄島でのサンゴ群集の回復力を推定するために、慶良間列島で2地域、沖縄島で6地域を選定し、階層的に合計31の地点を設定し調査研究を実施した。各地点でサンゴの放卵放精がある5月の満月までに幼生定着基盤を設置し、2ヵ月後に回収した。また回収時に各地点で、サンゴ群集の調査を行った。その結果、以下の点が明らかとなった。 1,沖縄島では調査を行った18地点のうち、サンゴ群集の回復がある程度進んでいたのはオニヒトデ駆除が行われている1地点のみで、全般的には回復は進んでいない。一方慶良間列島では、座間味地域ではサンゴ群集が良好に維持されているが、渡嘉敷地域ではオニヒトデの捕食によるサンゴ被度の低下が認められた。 2.繁殖様式が放卵放精型で幼生の浮遊期間が長いミドリイシ科について、親サンゴが豊富に存在する座間味村で、親サンゴが減少した渡嘉敷村よりも幼生加入量が多いことが明らかとなった。これは幼生浮遊期間が長い種でも、数kmの広がりの中に幼生が定着する可能性を示唆する結果である。 3.沖縄島と慶良間列島ともに、幼生供給源であった慶良間列島でのサンゴの減少に伴い、サンゴ幼生供給量が減少していることが、過去の調査結果との比較で明らかとなった。 4.沖縄島でサンゴ回復が進んでいる場所で、ミドリイシ属サンゴの群体サイズと性的成熟の関係を調査した。その結果、多くの種で直径が10cmを超えると成熟が始まることが明らかとなった。 5.西表島で、サンゴの繁殖と環境条件に関する予備調査を実施した。 これらのことから沖縄島と慶良間列島では、サンゴ群集は存続の危機にあると言える。現在残っているサンゴを保全し生存・成長させ、地域全体のサンゴ幼生生産量を増やす必要性が強く示唆された。
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