研究課題
わが国に自生する300を超える分類群のラン科植物のうち、196の分類群は環境省のレッドデータリストの絶滅危惧のカテゴリーに属し、絶滅の危機と隣り合わせの状態が続いている。わが国の亜熱帯から亜寒帯に自生する地生ランの多くは、ラン科全体の中でも、種子発芽が著しく困難な"難発芽性"のグループに属し、種子繁殖が困難であると長い間認識されてきた。本研究では、本邦産の亜熱帯、暖温帯、ならびに冷温帯の3つの気候帯から17属40分類群の"難発芽性"ランの完熟種子を供試し、本邦産のラン科希少種に広く存在する種子の"難発芽性"ラン種子の発芽能力の推移を経時的に評価して、最適なラン種子の貯蔵条件の解明を進める。以上を第二の目的としている。本年度は、昨年度までに入手した研究対象の分類群の完熟種子を用いて、効率的な発芽促進方法を確立した。これらの成果については学会において口頭発表を行い、続いて学術雑誌へ投稿するための原稿の作成を行なっている。また、大量の種子が確保できた、一部の分類群においては種子の低温ならびに液体窒素中における超低温貯蔵試験をおこない、長期間の種子の保存も可能であることを明らかとした。