研究概要 |
1.(新規遺伝子資源の保全) 石垣島、タイ、東チモール、ラオス、パプアニューギニアにおいて、新たな共生関連遺伝子資源を収集保全した。 2.(根粒菌の多様性解析) タイで収集した根粒菌は、根粒形成遺伝子、分類のマーカーに使われるgyrB遺伝子において極めて多様であった。またNodファクターの多様性も高く、様々な根粒着生反応を示した。沖縄県石垣島において6種のマメ科植物から収集した40株の根粒菌に関して、16S-rRNA遺伝子(約1500bp)の塩基配列解析を行った。その結果以下のことが明らかになった。導入種であるキマメ(Cajanus cajan)、ササゲ(Vigna unguiculata)、クロバナアズキ(Macroptilium atropurpureum)には、同一個体の根にRhizobium属とBradyrhizobium属の根粒菌が着生していた。自生種であるオオヤブツルアズキ(V.reflexo-pilosa)のおよびヒナアズキ(V.riukiuensis)には、Bradyrhizobium属根粒菌のみが着生していた。砂浜に自生するハマアズキ(V.marina)には、Sinorhizobium属根粒菌のみが着生していた。Sinorhizobium属根粒菌の日本における分布は、はじめて確認された新発見である。 3.(宿主植物の多様性解析) ミヤコグサで報告された情報をもとに、アズキのNodファクター受容体遺伝子を単離し、全塩基配列(NFR1 2347bp、NFR5 2786bp)を決定した。これらアズキNFR1,NFR5遺伝子は、アミノ酸配列においてミヤコグサの遺伝子とそれぞれ63%、71%の相同性を示し、LysM領域、細胞膜貫通部位、キナーゼ領域の数と構造が保存されていた。連鎖解析の結果、アズキNFR1は第6連鎖群に、NFR5は第6、7、11連鎖群に座上していると推定された。NFR1にはイントロンが内在するが、アズキNFR1前半領域のイントロン(約9kb)はミヤコグサ(約0.5kb)よりも長く、本遺伝子の進化を考察する上で興味深い領域であることが判明した。次に、アズキに近縁なVigna属アズキ亜属植物のNFR1,NFR5遺伝子の塩基配列を決定し、両遺伝子領域のDNA配列およびアミノ酸配列に基づく遺伝子系統樹を作成した。その結果、Vigna属植物種間にNFR遺伝子のアミノ酸多型が認められ、Nodファクター受容機能に分化が認められる可能性が示唆された。両NFR遺伝子は、アズキ亜属内のAngulares節とCeratotropis節・Aconitifoliae節の2つのグループに対応して分化していることが明らかになった。
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