研究課題
基盤研究(B)
この研究では社会や経済の変化に対して、州政府や地方自治体、そして教育機関などがどのように対応できるかについて比較・考察することにポイントを置いている。これまで連邦レベルでの対応についての研究など刊行されているが、ここでは北米東部に存在する大きな2つの州(ニューヨーク、オンタリオ)、そして小さな2つの州(ヴァーモント、ニューブランズウィック)を取り上げ、それぞれの州政府や地方自治体の取り組みを研究してきている。ところで、アメリカでは50の州、カナダでは10の州が存在しており、社会や経済の変化に州政府や地方自治体がどのように対応しているかを一律に議論することは難しい。州ごとに人ロ数や経済基盤が異なり、周辺の州との関係もそれぞれ異なるためである。たとえば、ある州では有効な政策であったとしても、別の州ではその政策手段が効果を持たないこともある。また州の政治的リーダーシップ(アメリカでは州知事、カナダでは州首相と呼ぶ)も特定の人物のカリスマ性や能力に左右されることがあり、普遍的で単純なモデルを描くことは容易ではない。この研究では、州や政策領域により、普遍化すること(一般化すること)の難しさを認識することがしばしばあった。平成18年度は適切な事例を発見することに重点を置き、日本国内での文献調査とアメリカ・カナダでの現地調査に努めた。加藤はアメリカの東部(マサチューセッツ州、ヴァーモント州など)を訪問し、報告書の収集や専門家へのヒアリングをおこなった。溝上はニューヨーク州とヴァーモント州の教育関係者と会い、資料の収集やヒアリングをおこなった。藤田は所属大学での公務が多忙なため(副学長、国際交流センター所長など)、おもに日本国内での資料収集にあたった。加藤が担当した政策領域は社会福祉や社会保障である。昨年、アメリカでは興味深い動きが見られた。つまり、日本のような国民皆保険の制度に近いものがアメリカでも検討され、導入されるようになったからである。マサチューセッツ州ではロムニー知事のリーダーシップもあり、2006年4月、すべての州民に医療保険に加入することを義務付けることになった。ヴァーモント州では歴史的に見て社会主義的な政党が一定の影響力を持ち、また2006年秋から州民皆保険を具体化する動きが進み、Catamount Health Planという医療保険制度が2007年10月からスタートすると言われている。本研究では福祉や医療制度、教育、地方自治、経済開発などについての新しい動きをフォローし、地域社会の活性化にどのような考え方や政策手段があるかを細かくフォローしていく。
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