研究概要 |
本研究は、若者のケア意識、ケア倫理、ケア経験の実態を、実証的調査研究によって明らかにし、ジェンダーの観点からケア意識の形成に影響を与える社会的・文化的要因を分析することを主な目的とする。本年度は上記研究課題のもとに、研究会を東京、名古屋で定期的に開催し、研究目的に合致した理論的枠組み、先行研究の整理、調査分析等について熱心に討議を重ねた。本年度の研究計画に沿った展開を行い、一定の成果を蓄積した。 1.先行研究の整理・分析と専門的知識の共有:本年度は先行研究の総合的把握のため、上記テーマに関する国内外の文献を収集した。海外の先行研究についてはN.Noddings, J.Tronto, C.Gilligan, N.Folbre, E.Kittay (ed)ほか、古典的文献から近年の著作まで、ケア関連の倫理、教育、労働とジェンダーなどの論点の変遷を整理した。また、日本のケアとジェンダー(福祉、介護、育児、医療)に関する多数の著作を、研究代表者・研究分担者が各自の担当分野ごとに調査・講読し、その論点と知見を共有した。さらにケアの社会学的研究、男性介護職の実情などに関する専門的知識の提供を受けた。これらの研究により、ジェンダー視点によるケアの包括的考察の妥当性について一定の結論を得た。 2.予備的聞き取り調査と調査項目の検討:本年度は、次年度に予定している若年層を対象とした大量調査の前段階として、男性介護職を中心に、ケアワークに関わる若年層男女への聞き取り調査を実施した。職業キャリアの形成過程、子ども時代の経験、家族関係、ジェンダー意識など多岐にわたるインタビュー内容を、調査対象者の了解のもとに録音し、データを文字化した。本調査により、次年度の調査項目を明確化するとともに、日本のジェンダー構造とその問題点、ジェンダー公正とケア倫理の形成過程など、本研究課題を多面的に解明するための基盤を得た。
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