研究課題/領域番号 |
16320007
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
哲学・倫理学
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
八巻 和彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (10108003)
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研究分担者 |
薗田 坦 仁愛大学, 学長・人間学部, 教授 (40047072)
松本 歌郎 聖トマス大学, 国際文化・言語学科, 教授 (00159154)
山我 哲雄 北星学園大学, 経済学部, 教授 (80230332)
降旗 芳彦 実践女子大学, 文学部, 准教授 (20238661)
矢内 義顕 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90200469)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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キーワード | 中世 / キリスト教 / 神 / イスラーム / ユダヤ教 / 哲学 / 宗教 / ヨーロツパ |
研究概要 |
われわれの共同研究は、計4回の公開国際研究会を開催しながら、概略以下の点を明らかにした。当時のキリスト教、イスラーム、ユダヤ教という三者は、互いに相手に敵対的に対応することが常態となっていた経緯もあって、相手を理解するためのスキームをほとんど所持しておらず、また相手方に関する情報も驚くほどに不足していた。この情報不足と相互理解用のスキームの欠如は、負の相互作用の連鎖を引き起こしていた。 きらに当時は、それぞれの社会構成員全体が一つの宗教を信じ、それが社会全体の世界観でもあったので、他の文化に生きる宗教を、自分たちの信じている宗教と同じ<宗教>として認めることさえも自明ではない段階が存在した。そこには、当然のことながら「寛容」という概念は成立しえなかった しかし、中世盛期以降に顕著となる相互排斥から相互認知へという変化が成立した。これの成立に決定的な役割を果たしたのは、人間に普遍的に存在して普遍的な妥当性を有する理性というものの存在が認識されたことである。その契機は、イスラーム世界を通じてのキリスト教中世におけるギリシア哲学の受容であった。これにはイベリア半島が重要な役割を果たした。しかしそれに先立ち、初期イスラーム世界にギリシアの思想的遺産が伝えられるに際しては、それの翻訳等の過程において、イスラーム支配下に入ったシリア等に居住していたキリスト教徒知識人の役割が大きかった。 この「人間に普遍的に存在して普遍的な妥当性を有する理性」とは、各宗教の内的あり方にも働いており、その宗教に属する個々人にも働いており、さらには他の宗教にも同じ構造で働いているであろうと、想定される。そして、このような想定を成立させるもの自体も他ならぬ理性なのである。このような洞察は、トマスやR.ベーコン、クザーヌスらに明確に存在していた。 ヨーロッパ中世の宗教間理解を成立させる上での理性の役割の重要で多様な相をさらに綿密に解明することが、われわれの次の研究課題となっている。
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