本科学研究補助金交付にともない、「明清東西思想交渉研究会」を組織し、代表者・分担者を中心に協力者をえて、本年度中に四回(うち第4回は2005年3月に予定)を開催した。代表と分担者は明清東西思想交渉研究会以外に、二人であわせて6つの研究発表をおこなった。おこなわれた研究内容は、中国古代からの中心思想である儒教を軸として、その内部的展開と西方への漸進にっいての基礎的研究である。代表者は今年度は中国におけるイスラム哲学の流入、とくに明清期の王岱輿の哲学を中心に研究を進め、その著作『正教真詮』『清真大学』中における原イスラム起源のものと宋学的要素との分析を行った。分担者は宋学のドイツ啓蒙哲学への影響を中心に研究を進めた。宋学がドイツに流入する中継点となったフランス啓蒙期における中国関係資料を中心に、渡仏調査をおこない、また数度の研究発表を行った。とくに、カントの師であるヴォルフへの中国の影響について従来ほとんど気づかれていなかった宣教師ノエルのもたらした資料の分析は重要である。 ●明清東西思想交渉研究会:第1回(6月27日、筑波大学学校教育部)発表:堀池信夫「コスモロジーとしての儒教」/第2回(7月18日、大阪大学文学部)発表:堀池信夫「ノエルと小学に関する諸問題」/第3回(10月24日、筑波大学人文社会学系棟)発表:堀池信夫「中国古代の天人論について」/第4回(3月19日、筑波大学人文社会学系棟【予定】)発表:松崎哲之「明末清初における春秋学」
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