研究課題/領域番号 |
16320016
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田部 胤久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (80211142)
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研究分担者 |
渡辺 裕 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80167163)
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キーワード | 文化的キアスム / 国民主義 / 民謡 / ドイツロマン主義 / ヴィレール / 独仏関係 / シャバノンとドイツ / 観光と芸術 |
研究概要 |
1年目は、主として問題の原理的・理論的側面に光を当てることを試みた。 研究代表者小田部は、第1に文化的キアスムの構造を「さすらい」という概念に即して明らかにすることを試みた。第2に文化的キアスム=交叉の例として18世紀末から19世紀初頭にかけてのドイツとフランスの美学理論の交叉を研究した(ドイツに成立した近代美学がフランスに輸入される経緯について)。具体的には、ヴィレールがいかにカント美学およびドイツ初期ロマン主義をフランス語圏に紹介したのかを、実際のテクストに即して明らかにした。第3に、ドイツロマン主義の時代における「国家的なもの」と「超国家的なもの」との交叉について考察し、その一端はこの科研費を用いて9月に行ったコロキウムにおいて発表した。第4に、「自然」と「超自然」との間の交叉について(主としてシェリング、ノヴァーリス、ホフマンに即して)考察を行い、その成果は、シェリング論集所収の論文、および『理想』所収の論文において公表した。第5に、フランス18世紀を代表する音楽理論家ヤバノンがドイツにおいてどのように受容されたのか、ヒラーによる独訳および註釈を考察し、ヒラーによる註釈部分を仏訳した。 渡辺は、文化的キアスムの基本構造について、「異文化接触の中の民謡-「正調江差追分」にみる自己表象の成立と変容-」、『日本音楽・芸能をめぐる異文化接触メカニズムの研究-1900年パリ万博前後における東西の視線の相互変容-』、平成13-15年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(1))(研究成果報告書、研究代表者:井上さつき、108-136ページ)において考察したが、これをもとにさらなる展開を図っている。とりわけ、観光客の視線との関わりの中で地域文化が創出されてゆくプロセスの分析に力点を置き、本年度は「音楽の都ウィーン」という表象が生まれる際に観光客の視線がどのように機能していたのかを、「観光人類学」的手法を用いて分析した。
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