研究課題
小田部は、2006年11月に「国際シェリング哲学大会」の組織にあたった。この大会は、日本シェリング協会と国際シェリング協会とが共同で行ったものであり、「日本とドイツの精神史における自然と芸術」を主題とした比較研究を一つの柱とし、ドイツから3名、そのほかイタリアから1名、スペインから1名の研究者を交えて共同研究を行った。その成果は、美学研究室の公刊する欧文雑誌JTLA 2007年号に掲載される。さらに、小田部はブレーメン大学クナーツ氏との共同研究を2006年度も継続し、8月にセミナーを行った(そのほか、岡山大学教授山口和子氏、大東文化大学岡本和子氏が参加)。その席において、小田部は、「断片」の持つ脱領域的・力動的性格について報告を行った。また、6月に中国・成都で行われた国際美学セミナーにおいて小田部は、間文化的美学の試みとして20世紀初頭に日独の比較美学を牽引した鼓常良の「無框性」概念に関する報告を行った。また、小田部はさらに、18世紀初頭のドイツ啓蒙主義者クリスティアン・ヴォルフにかかわる研究を行ったが、その際小田部は、当時の大学組織が都市の性格によって大きく規定されていたことを明らかにした。「ドイツ啓蒙主義」という表現はこうした郡市の間の文化的差異を捨象する点において問題を含んでいる、と小田部は指摘した。渡辺は音楽学の領域において、とりわけ19世紀初頭のピアノの技術的展開に関する研究を行った。当時のピアノはなお都市ごとに性格を大きくことにしており、ベートーヴェンの作曲はヴィーンのピアノを基礎とするものであった。しかし、ベートーヴェンは技術的により近代化されたロンドン製のピアノにも興味を示している。ただし、渡辺の明らかにしたところでは、ベートーヴェンはこうしたロンドン製のピアノを受容する際にもヴィーン流のピアノの演奏法を基礎にしている。このようにヨーロッパの「ピアノ」の内部においても文化的キアスムの存在があることを渡辺は論じた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)
ドイツ・ロマン主義研究(伊坂青司, 原田哲史 編)(お茶の水書房)
ページ: 212-233
芸術の始まる時、尽きる時(栗原隆 編)(東北大学出版会)
ページ: 275-294
ピアノはいつピアノになったか(伊東信宏 編)(大阪大学出版会)
ページ: 77-104
美学 225
ページ: 15-28
Jahrbuch fur asiatische Philosophie 1
ページ: 101-132
JTLA 31(印刷中)