研究概要 |
小田部は2007年7月にアンカラで開催された第17回国際美学会議において、高建平(中国)の主催するシンポジウム「アジア美学の多様性」に参加し、「ヨーロッパーアジア」という観念がヨーロッパにおいていかに生じ、それがアジアにおいていかに受容され,また批判されたのか、について美学的視点から歴史的・理論的に考察を行った。これは4年にわたるこの「文化的キアスムの美学」の研究の一つの成果であるとともに、次の研究課題への橋渡しの役割をも果たすものである。また、2008年3月に開催されたフンボルト・コレークでは柳宗悦の「型」の概念に着目し,それをヨーロッパ哲学における「ハビトゥス」の一種として捉える可能性を提起し、同時に近代日本の美学理論それ自体が文化的キアスムの所産である、という問題提起を行った。 渡辺は数年がかりで編者の一人として取り組んできた『事典 世界音楽の本』において、現代の世界の文化状況を,西洋世界と他の文化との接触融合に伴う作用・反作用の力学として捉えるという基本的な考え方のもとに、自ち担当した「日本音楽の20世紀」では、近代化以降の日本め音楽文化の全体的な状況を位置づけることに成功し、本研究の総括にふさわしい成果を提示することができた。また、論文「文化としての著作権」においては、西洋の著作権制度がグローバリゼーション下で他の文化に越境していくことによって、とりわけその文化の活動を低下させる弊害をもたらしている現状、そのことが日本文化を考える上でも重要な論点であることの問題提起を行った。
|