研究課題/領域番号 |
16320036
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
湯浅 博雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30130842)
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研究分担者 |
宮下 志朗 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90138610)
青木 誠之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (20011356)
鍛冶 哲郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30135818)
丹治 愛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90133686)
野崎 歓 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60218310)
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キーワード | 文学 / 翻訳理論 / 翻訳の実践 / 文化交流論 / 言語態 / 英仏独露 |
研究概要 |
本年度は、二つのシンポジウムを基軸にして研究を行った。まず2004年6月16日、「翻訳の楽しみ、翻訳の苦しみ」と題したシンポでは、翻訳の現場から考察を進めた。宮下志朗がラブレー『ガルガンチュア物語』の翻訳を、青木誠之がヘルダーリンの『詩集』の翻訳を、湯浅博雄がランボー『地獄の一季節』の翻訳を、丹治愛がヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』の翻訳を基にしつつ、各研究者がその実践を通じて、実感しつつ了解したことをまとめ、整理した。その過程で確認できたのは、第一に翻訳にとって重要なのは、意味(概念的な内容)だけではないこと、翻訳は<意味を移す>のではなく、むしろかたち(言葉をなし、言葉をそういうフォルムとして存在させるかたち)を考慮し、かたちと結ばれた限りでの意味を伝えるということである。また第二に、翻訳者は、二つの愛を同時に生きなければならないこと、つまり一方で、他なるもの、他なる言語・文化を深く愛し、探索し続けつつ、他方で同時に母語をこの上なく愛すこと、母語的なもの、母語における文化的なものを、かけがえのないものとして愛すことが必要であるという点である。次に、2005年3月23日、第二回「翻訳の言語態研究シンポジウム--諸言語のインターフェースの観点から」を挙行した。澤田直が「フランコフォニー文学における翻訳の問題--アブデルケビール・ハティビを中心に」と題した講演を行い、旧植民地における複数言語使用の問題、重層的な文化状況のなかでアイデンティティをどう構築するかという問題を分析し、全員で討論した。さらにフランスから招聘したアンヌ・バイヤール・坂井が、「媒介としての翻訳をめぐって」という講演を行い、日本語と欧米語との翻訳に関わる難関部分を指摘し、全員で議論して要点を整理した。
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