研究課題
本年度は、文化の翻訳可能性と不可能性を探究した。いろいろ異なる文化(言語、社会)は、歴史的に見れば、きわめて異なる源から生まれ、違った仕方で発展してきたものであり、個々の文化は、他に代えられない独特なものを持っている。たとえば宗教性がそうであるように、きわめて特異な固有性である。他なる文化の核をなす、こうした特異なものは、ある一つの文化に属する私(主体)がそれを受け止め、理解し、受け入れようとするとき、最も強く私に抵抗し、逃げ去り、私(の言語、思考)によって理解されるままにはならない。この独特な特異性は、言語態的な観点から言えば、そのラング(母語)に固有な語法、特有な言い回しや語り口によってしか言い表せないものであり、それゆえ翻訳することが最も困難なものである。異文化の受け入れにおいて肝心なことは、この翻訳しがたいものから眼をそらさず、絶えずそれを気づかうことだろう。伝達=疎通しやすいもの、明確に言い表しうるものにとどまっていては、異文化を受け入れるということを誤認してしまう。翻訳しがたいものは、私(の言語、思考)にとってまったくの他であり、特異なものであるが、しかし特異で固有なものであるからといって、普遍化しえないものであるとは限らない。各々の文化(言語)において、志向する仕方(たとえば宗教性を志向する仕方)はそれぞれに異なっている。だから、等価なものではないし、単純に交換可能でもない。けれども志向されているものは、あるやり方で同じものである(それゆえ共通する)ことがありうる。各々の文化のうちで、なにかしら同じものが志向されているという点で、各々の文化は、源流、発展の経緯、歴史の相違を超えて、ある種の類縁性と親近性を持つであろう。こうした点を含めて、10月22日にはシンポジウム「精神分析的視点の可能性」(東大、駒場)を開催し、湯浅、山田などの提題に基づいて議論を深めた。
すべて 2005
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季刊iichiko 秋季号
ページ: 29-42
Vies et poetique de Rinbaud, 150-eme anniversaire de renaissannce No.5
ページ: 7-20
Revue de presse etablie par Laurent Demoulin Les Edition de Minuit juin
ページ: 22-24
写真との対話(近藤・管編)
ページ: 217-230
ゾラの可能性 表象・科学・身体(小倉・宮下編)(藤原書店)
口承文学の世界(春田節子編)(弘学社)