研究課題
基盤研究(B)
この研究の目的は文学・文化学と医学の学際研究を日本、イギリス、アメリカ、カナダのそれぞれの所定の時期を対象に行うことである。アメリカと日本の場合は、アメリカ19世紀の精神医学と明治期精神医学の交渉をテーマにしており、イギリスの場合には18世紀から19世紀にかけてのロマンティシズムと医学の相互関係をその基底をなすと考えられる博物学からの視点で捉えるとともに、20世紀の難病の問題を代弁=表象の観点から考えた。カナダの場合はイヌイトへの西欧近代医学の流入と福祉政策との関連を調査した。(1)文学と医学の接点としてのメランコリーと神経衰弱(仙葉豊)本年度は、19世紀ヨーロッパを席巻することになる神経衰弱の流行の源流を辿って、イギリス18世紀の心身症とも言うべきメランコリーの病を調査した。また、夏目漱石を中心とする明治期の神経衰弱の流行をその治療法としての「海水浴」という概念から考えてみた。この結果として3本の論文がある。(2)ロマン主義思想家における功利主義と心身論(小口一郎)本年は、イギリス18世紀から19世紀にかけての文学と医学の交渉を、18世紀から受け継がれてきた功利主義と連想心理学を中心として研究した。この研究の一環として、平成16年8月1日より17日にかけての、「国際ワーズワス学会」(於イギリス湖水地方)で発表を行い、海外研究者たちとの意見交換を行った。活字化したものは以下の業績一覧に挙げてある。(3)イヌイトの民族医療(大村敬一)本年はカナダ・ヌナヴト準州のクガールク村において、カナダ・イヌイトの民族医療に関する基礎的な調査を行い、身体にかかわるイヌイト語の語彙の収集をはじめ、イヌイトの民族医療の基盤となる情報を収集し、来年度以降の研究課題であるイヌイト社会の近代化と民族医療のテーマの基盤を整えた。(4)難病(プロテウス症候群)の代弁・表象の問題(山田雄三)平成16年度は、ジョゼフ・メリックの「エレファント・マン」における難病(特にプロテウス症候群)の問題を取上げ、1960年代から1990年代までの資料収集を行った。その研究の成果は、『病と身体の英米文学』(英宝社2004年)に寄稿した論文「難病の視覚的表象--戯曲、映画、テレビの中ジョゼフ・メリック」となった。
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Voyages of Conception : Essays in English Romanticism Tokyo : Kirihara-Shoten. (刊行予定)
詩的言語とレトリック--認知とコミュニケーションの文学的戦略(言語文化共同研究プロジェクト2004)(大阪大学言語文化研究科) (刊行予定)
Indigenous use and Management of Marine Resources (Senri Ethpological Studies) 67
ページ: 323-344
Correlations between Ecological, Symbolic, and Medical System in the Construction and the Distribution of Body Resourses(Ed.K Sugawara) (印刷中)
腐敗と再生・身体医文化論III(小菅隼人編・慶應大学出版会)
ページ: 160-181
病と身体の英米文学(玉井〓・仙葉豊共編著 英宝社)
ページ: 133-155
表象と文化I(言語文化共同研究プロジェクト2003・大阪大学言語文化研究科)
ページ: 7-14
テクストの地平・森春秀教授古希記念論文集 (印刷中)
ページ: 156-179
メタファー研究の方法と射程(言語文化共同研究プロジェクト2003・大阪大学言語文化研究科)
ページ: 75-80
海洋資源の利用と管理に関する人類学的研究(国立民俗学博物館調査報告) 46
ページ: 73-100
野生のナヴィゲーション(野中健一編:古今書院)
ページ: 55-90
ページ: 307-327