研究課題
基盤研究(B)
京都・建仁寺の塔頭である両足院は、五山文学関係資料の抄物や五山版は云うに及ばず、宋時代の版本や古写本などの宝庫として知られてはいるが、その全貌が明かとはなっていないのが現状である。所蔵されている書跡・典籍類は、180箱余の箱の収納されており、それらの一々について書名・法量・装訂・時代などの書誌学的項目と内容に関する調査を実施し、善本を中心とした解題を付した総目録を作成することを目的とする。これまで、平成16年度から平成18年度の三カ年で都合8回の調査を行い、箱に収められている書跡をすべて採録する悉皆調査で第70箱目までの調査を終えた。これまでの概要を述べれば、江戸時代の仏教書が大半を占めているが、しばしば中国・明時代の版本の復刻と見られる典籍が収蔵されていることが確認された。その中でも、特に重要と思われるのは、第33箱に納められている版本類である。中国の版本としては、明時代の崇禎十七年(一六四四)の刊記がある『禅林宝訓』一冊(33-10)を確認し、朝鮮本では『緇門警訓』二巻・『続集』一巻(33-36)が十六世紀中頃、江原道の表訓寺において刊行されたと見られる。五山版では、嘉慶元年(一三八七)の刊記がある『冥枢会要』三冊(33-35)は、詳しく調査した結果、江戸時代の後摺りと見られることがわかった。このように、第33箱には中国・朝鮮・日本という漢字文化圏三国にわたる版本が納められており、両足院の蔵書の特徴の一端をよく表している。尚、本研究は、平成19年度より基盤研究B「建仁寺両足院に所蔵される五山文学関係典籍類の調査研究」に引き継がれており、平成22年度末には残りの書跡・典籍類の調査研究を終了する予定である。
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禅文化研究所紀要 28号
ページ: 165-177
学叢 28号
ページ: 43-54
ANNUAL REPORT of THE INSTITUTE FOR ZEN STUDIES No.28
The Kyoto National Museum Bulletin 28