研究課題
本年度は、研究対象である北アメリカ北西海岸先住民諸言語の形態統語法のなかでも、特に複統合性について研究・考察を進めた。まず、6月上旬の日本言語学会第130回大会において、代表者・渡辺己を企画の中心および当日の司会進行役とし、研究分担者・中山俊秀、その他2名の研究者を加え、「抱合と複統合性」と題したワークショップをおこなった。さらにそれを踏まえ、6月下旬には本研究の代表者・分担者が集まり、複統合性とは何か、そしてそれぞれが研究している言語において複統合性がどのように見られるか、意見交換ならびに研究討議をおこなった。夏期にはカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州において代表者・渡辺己、研究分担者・中山俊秀、そして研究協力者・中山(市橋)久美子(東京外国語大学非常勤講師)が、6、7週間の現地調査をおこない、それぞれスライアモン語、ヌートカ語、ニティナト語について、複統合性に重点をおきながら聞き取り調査をおこない、さらにテキスト資料収集をおこなった。本年度後半には、それぞれの資料の整理・分析を進め、各言語の複統合性について、互いに協議を重ね、意見交換をおこなった。本年度の研究によって、複統合性という言語類型の概念そのものを考え直す必要があることが明確となってきた。従来は、複統合性は一語のなかに盛り込みうる形態素の数が多いという点のみにおいて定義づけられてきた傾向が強い。しかし、本研究を通して、必ずしも単純に形態素の数の問題として片づけられないことが分かってきた。本研究でそれぞれが研究対象としている言語は、どれも複統合的だと言われているが、どのような基準のもとにそう考えられてきたのか、各自が考察し直し、それをもとに、複統合的と言われる言語にはどういう点が共通しているのかを分析する必要が明らかになった。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (7件)
表記の習慣のない言語の表記(塩原朝子, 児玉茂昭編)(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
ページ: 167-191
環北太平洋の言語 第13号.(津曲敏郎(編))(北海大学大学院文学研究科.) (印刷中)
今、世界のことばが危ない!-グローバル化と少数者の言語-(宮岡伯人編)(クバプロ)
ページ: 36-42
月刊言語 34(2)
ページ: 16-19
Corpus-Based Approaches to Sentence Structures. (Toshihiro Takagaki, Susumu Zaima, Yoichiro Tsuruga, Francisco Moreno Fernandez, Yuji Kawaguchi (eds.),)(Amsterdam : John Benjamins.)
ページ: 15-31
記述的研究から明らかになる文法の諸問題.(中山俊秀, 塩原朝子編)(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所.)
ページ: 127-143
記述研究から明らかになる文法の諸問題.(中山俊秀, 塩原朝子編)(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所.)
ページ: 49-60