研究概要 |
昨年度に続き、国内外で行われた言語接触に関する研究から得られた知見を多角的に検討するため、全員で文献調査を行った。 日比谷は、ヴァンクーヴァーとトロントで収集した日系カナダ人の自然談話資料の分析を続けたほか、トロントの中国系・イタリア系コミュニティの言語調査を進めているHoffmanおよびWalkerヨーク大学助教授と意見交換を行い、今後の研究方向について討議した。 林は、ベルリン市のトルコ系移民地区にある2つのOberschule(1つはGesamtschule、もう1つはGymnasium)において、約250名の生徒にアンケートを実施し、ドイツ語とトルコ語を用いて生活している彼らが、これら2言語をどのように使い分けているか、これらの言語に対してどのような考えを持っているかを、言語使用に直接関わらない他の質問とともに尋ねた。このデータは、一部の生徒や教員とのインタビューの結果とともに、目下整理を進めているところである。以上の他に、ベルリン自由大学J.F.ケネディ研究所のキャロル・ファフ教授によって収集されたトルコ系移民子弟の談話資料の閲覧、同大学トルコ学研究所、および国立図書館での、トルコ系言語に関する言語接触の資料(特に19世末から20世紀初頭に中央アジアで行われた学術探検の報告)の文献調査を行った。また、本研究課題の中間報告として、以下の3回の発表・講演を行った。 2005年7月28日:"Mixed verbal compounds in the Turkish variety of Turkish-German bilinguals", (10th International Congress for the Study of Child Language, Freie Universitaet Berlin) 2005年11月23日:"Mixed Verbs in Turkish of Turkish-German Bilinguals"(上記ケネディ研究所でのシンポジウム) 2006年2月17日:"On a Modern Uyghur-based secret language : Fieldwork and preliminary analysis"(ベルリン自由大学トルコ学研究所) 生越は、在日コリアン、特にニューカマーの人たちの言語生活について資料収集を行った。3月に「在日コリアンの言語」というタイトルで公開の研究会を行う。これは昨年度のワークショップに続き、在日コリアンの言語を研究している研究者のネットワークを作るとともに、その研究の進展を目指すためのものである。 11月23日にベルリン自由大学でファフ教授(本研究プロジェクト海外共同研究者)が主催したシンポジウム"Sociolinguistic Consequences of Immigration : Case Studies of Language Minorities in Canada, Germany, and Japan"に全員が参加し、各自がフィールドとしている移民コミュニティに関する研究発表ならびに意見交換を行った。
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