研究課題/領域番号 |
16320059
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金水 敏 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70153260)
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研究分担者 |
大鹿 薫久 関西学院大学, 文学部, 教授 (20127195)
高山 倫明 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 助教授 (90179565)
乾 善彦 大阪女子大学, 人文社会学部, 教授 (30193569)
安部 清哉 学習院大学, 文学部, 教授 (80184216)
渋谷 勝己 大阪大学, 文学研究科, 助教授 (90206152)
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キーワード | 日本語 / 歴史 / 統語論 / 音韻論 / 形態論 / 語彙論 / 意味論 / 文字・表記 |
研究概要 |
本年度は、計5回の研究打ち合わせ・討議と研究会を実施した。 第1回研究会では、乾善彦氏の発表「表記体と文体」にもとづき、表記史に関する問題点を整理した。乾氏は、「文体」と「表記体」とを区別し、また漢字の用法により、その「表語用法」を文章表記の基本とするものと「表音用法」を文章表記の基本とするものとにわけ、その中間的な段階をさまざまに設定することを提案した。 第2回研究会では、前田広幸氏の発表「制約序列と入力形の変化」に基づき、音韻史の問題について討議した。前田氏は、個々の表層形の有標性、忠実性だけでなく、音韻体系の有標性、忠実性に関する制約を立てるよう拡張されたOTの枠組みを導入し、当該変化の分析を行った。また、ある世代で制約序列のリランキングが起こったとしても、次世代で習得されるグラマー(や入力形)がそのリランキングの結果(やそれをもとにレキシコンを最適化した形)であるとは限らないことを指摘し、グラマーの史的変化に関し、単純に上のような一般方向のみを前提とする立場の危うさについて検討した。 第3回研究会では、Cornell大学のJohn Whitman氏をゲストスピーカーとして迎え、氏の発表"THE FORM AND FUNCTION OF THE RENTAIKEI(連体形) AND IZENKEI(已然形) SUFFIXES IN PROTO-JAPANESE"に基づき、原日本語において連体形と巳然形が同一起源を持つという仮説について検討した。 第4回研究会では、大鹿薫久氏の発表「「べし」の衰微から」に基づき、助動詞の意味変化について討議を行った。大鹿氏は、平家物語における「べし」と、それに対応する天草版平家物語における諸形式を詳細につきあわせることにより、「べし」の意味がどのように推移したかが明らかになり、ひいては古代語と現代語の、モダリティに関する体系の違いが浮き彫りになることを示した。 第5回研究会では、学生の発表もまじえ、古代語のテンス・アスペクト体系とその歴史的変化、古代・中世語の語構成論、当為表現の変遷、仮名遣いの発生等の問題について討議を行った。 毎回、研究会とともに、本研究の成果発表としての出版について打ち合わせを行った。出版物のコンセプト、巻数、構成等について大まかな方針を定めた。 以上の研究会の詳細については、すべてホームページhttp://www.let.osaka-u.ac.jpjealit/kokugo/jlhistory/index.htmlにおいて逐一公開している。
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