研究概要 |
ゲルマン系の言語にあって特に目を引く現代英語の特徴として,本研究課題では次のような性質に着目している.(1)非人称受動を欠く〔独語・蘭語と異なる〕,(2)複合時制における助動詞選択(HAVE/BE選択)の現象を欠く〔独・蘭と異なる〕,(3)動詞の単純現在時制が未完了の解釈を許さない〔独・蘭と異なる〕,(4)迂言的進行形《BE+現在分詞》を有する〔独・蘭と異なる〕,(5)動作受動を《BE+過去分詞》の形式で表わす〔独・蘭と異なる〕,(6)格の区別を欠く〔独と異なり蘭と共通〕,(7)与格受動を許す〔独・蘭と異なる〕,(8)自由与格の生起が極端に制限されている〔独と異なり蘭と共通〕,(9)現在完了構文に特定の副詞類(yesterday等)が生起しにくい〔独・蘭と異なる〕,(10)動詞HAVEに基づく使役構文を有する〔独・蘭と異なる〕.これらのうち,どの性質とどの性質の間に有機的な関連があるのかを,主にドイツ語・オランダ語との比較を通じて明らかにし,その関連に理論的な基礎を与えることを,本研究課題は目標としている.初年度にあたる今年度は,受動表現に関わる(1),(4),(5),(7)を中心に研究を進めたが,昨年度からすでに本格的な取り組みを始めていた助動詞選択関連の研究も継続して行なった.助動詞選択については,米国の専門誌Journal of East Asian Linguisticsに論文を掲載し,さらに「領域拡張と非対格性」と題する論文も書き下ろした.受動表現に関してはほぼ計画通りの基礎的作業を行なった.今年度,研究代表者は『韓国日本学連合会』および『日本語文法学会』より講演依頼を受けたため,それぞれの学会におけるシンポジウムにおいて,「言語の類型とヴォイスの体系」(平成16年7,月10日,東西大学(韓国釜山)),「ヴォイス形式の類型と起源について」(平成16年11月27日,関西学院大学)と題する口頭発表を行ない,研究成果の一端を公にした.
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