研究課題
国内実験研究においては、前年度の成果を踏まえ、新しい刺激文を用いてさらに30名の日本語を母語とする幼稚園児から言語資料を収集し分析を行った。この分析から、まず、non-adultな子供の反応には、取り立て助詞(係助詞「も」及び副助詞「だけ」)に後続する格助詞の生起が関係している新事実を発見した。この発見は、Endo(2003)の研究が副助詞に限定されていた点を考慮すると、取り立て助詞の獲得研究上大きな進展といえる。また、実験で観察されたnon-adultな子供の反応は、ドイツ語や英語などの言語獲得研究で観察された誤用のパターンと合致している点で、本研究の知見は、Crain et al.(1993)の提案を如何にしてより制限された理論的枠組みで捉え直すべきであるかという提言を行っていると言えよう。国外実験研究では、大まかなデザインと実験助手の訓練を終えて、実験の微調整を行っている段階である。(米国コネチカット大学の倫理委員会の承認済み)。成果の一部を、Matsuoka et al.(2005a)として30th Boston University Conference on Language Development(於ボストン大学)及び,松岡他(2005a)Hiyoshi Research Portfolio(於慶応大学)において報告した。理論研究においては、日本語の取り立て助詞の分布が派生的アプローチにより最もよく捉えられることを示し、feature assemblingに関する理論構築に取り組んだ。これを基盤とし、「も」の統語派生と「だけ」の統語派生は本質的に異なることを明らかにした。より具体的には、さらに、取り立て助詞に後続する格助詞の生起が統語派生にどのように対応しているかを解明した。その上で、本研究が提案した分析が、日本語の「だけ」の分析のみならず、中国語のLian XP dou構文まで拡張できることを指摘した。この成果の一部は、Hoshi & MiyoShi(2005)として第131回日本言語学会(於広島大学)において報告し、また、Hoshi(2006)として第78回日本英文学会(於中京大学)にて報告予定である。
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Online Supplement to the Proceedings of the 30th Boston University Conference on Language 30
日吉紀要:言語,文化,コミュニケーション(Language, Culture, and Communication) 35
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