研究分担者 |
寺井 正憲 千葉大学, 教育学部, 教授 (50272290)
岩田 美保 千葉大学, 教育学部, 准教授 (00334160)
只木 徹 名城大学, 大学教育開発センター, 助教 (70410777)
佐藤 尚子 千葉大学, 国際教育センター, 准教授 (40251152)
吉野 文 千葉大学, 国際教育センター, 准教授 (10261885)
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研究概要 |
母語としての日本語力(国語力)と外国語としての英語力はともに「言語力」という点で共通の基盤に立っている.したがってその指導は有機的に連携して行われるべきとの認識に立って本研究を開始した.平成19年度は両言語の共通基盤のひとつを,「クリティカルな思考による聴解と読解を経て,自らの考えを口頭や記述により論理的に表現(説明,説得,描写,弁明など)する力」と定義して研究の焦点を絞った.その結果,国語と英語の教科は批判的、論理的思考力の育成においても補完的・有機的な連携が可能であることを指導助言した小・中・高で確認した.さらに母語による確固とした思考力と言語力の涵養は幼児期、児童期を経て中学・高校に至るまでの一貫した指導体制のもとで育成すべきこと,従来の国語が重視してきた情緒的に文学作品を深く鑑賞するだけではその力は養成できず,言語技術指導の観点も含めるべきことを提案し,生きる力を育む観点からも,多様なジャンルとコンテンツを提供する教科横断的な指導体制が必須であるとの結論に至った.寺井は,PISA型読解力と関連させながら説明的文章の学習指導におけるこれまでの実践や理論の研究成果を整理し,批判的な読み,レトリックを読むこと,情報活用の学習指導,説明的文章における読者の育成について,今後の実践的な課題について提案した.また,学校全体で国語力をどのように育成するかについて,教育課程を組織する視点や教員の共同性を高める視点について指摘した.H20.3に発表された国語と英語の新指導要領は本科硯の結論とも合致し,本研究の成果の妥当性を証左する結果となった.教材開発については渡英して英国のQCA(Qualifications and Cuniculum Authority:カリキュラム開発研究所)開発の教材を収集し分析した結果,例えば英国の歴史教育は史実の知識伝授よりはむしろ読解力・作文力・論理的思考力・クリティカルな思考力の養成を主眼とし,本科研の提唱する言語力育成法の理念と合致していた.今後は自国の文化を尊重しつつも国際化時代に相応しい日本人の論理的・批判的思考力の育成を目指して研究を深めていく所存である.
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