研究概要 |
平成18年度の研究活動としては、文法性判断テストを日本国内で継続して実施した。項目応答理論を行う際の知識・技能修得のため、外部講師を招いて勉強会を開催した。また、サーバ上に構築した文法性判断テストのサイトで、タイで実際にデータ収集を開始した。そして国内で収集した約1200名の日本人英語学習者のデータに関して、外部機関と連携して分析を行い、調査した文法項目に関する困難度の一覧を得た。 学会発表としては、2本の発表を行った。一つ目は、The 11th Anniversary Conference of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics(Kangwon University, Korea)での発表で、心理動詞の習得に関する調査実験を行ったものである。意味上の主語に関する文法テストと心理動詞に関する文法性判断テストを与えた結果、意味処理と統語処理という特徴が、心理動詞の習得に影響を及ぼしているということが報告された。二つ目は、Second CLS International Conference(Holiday Inn Atrium Singapore, Singapore)での発表である。ここではこれまでの全ての文法性判断テストに関する1200名の日本人英語学習者のデータを、項目応答理論に基づいて分析し、すべてのカテゴリについて困難度による難易度順に並び替えた一覧表を得ることができた。 研究論文としては3つ挙げられる。一つElの論文(Ohba et al., 2006)では、関係詞に関する文法性判断テストのデータについてto不定詞の文法テストと絡めて分析を行い、学習者が意味的処理から統語的処理に移行するにつれて、関係詞のテストの得点平均も上昇した。二つめの論文(Shimizu et al., 2006)では、英語文法能力を測定するテスト開発の過程が報告された。古典的テスト理論と項目応答理論を用い、「新MEG」というテストを開発し、一般的文法能力の統制を行うための指標として用いられた。三つ目の論文(Yamakawa et al., 2006)は、2つ目の学会発表の内容が学会のProceedingsとして所収されたものである。
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