研究概要 |
本研究は、前回の科研費助成研究を継承しながら、(1)項目応答理論に基づいた文法能力標準テストの開発、(2)新たな文法項目の習得調査、(3)文法項目の習得調査の総データを項目応答理論に基づいて分析、(4)韓国やタイにおける文法項目の習得調査データを差異項目機能分析により分析という手順で実施された。(1)については、Shimizu et al.,(2006)で古典的テスト理論と2パラメタ・モデルの項目応答理論を用いて35問から成る文法能力標準テストを開発した。(2)については、前回の助成費研究と合わせて、to不定詞、非対格動詞、非能格動詞、与格交替、関係詞、心理動詞、使役交替、wh疑問文などの文法項目について調査を行ってきた。最終的な分析が可能な状態に至るまでは、各文法項目の習得状況について個別に分析して、途中経過報告という形で研究をまとめてきた(Nakano et al.,2004; Nakano et al.,2005; Sugino et al.,2005,2006;山川(他),2005; Ohba et al.,2006; Ohba et al.,(manuscript))。これらの研究から、個々の文法項目の習得研究については、前回の科研費助成研究と同様に、学習者が意味的処理から統語的処理に移行することと、各文法項目の習得にはある種の相関関係が確認できた。また、それぞれの理論的枠組みで提唱された予測に合致する結果が概して確認されたといえる。次に、(3)について、Yamakawa et al.,(2006)では、項目応答理論を用いての文法項目間の分析を行った。ここでは、文法標準テストとこれまでのすべての文法項目のテストを受験した約1200名の被験者のデータに関して、2パラメタ・モデルの項目応答理論に基づいた分析を行った。その結果、各文法項目のすべてのカテゴリについて、困難度(difficulty parameter value)に基づき難易度順に並び替えた一覧表を得ることができた。(4)については、現在タイの大学と協力してデータ収集の途中である。
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