研究課題
基盤研究(B)
本研究は、富山・能登を中心とする日本海沿岸地域における古墳の出現過程を、「沿岸ルート」による古墳文化の波及と、沿岸交通および交易を掌握する首長層の盛衰という新たな研究視点から検証することを目的とした。具体的には富山県氷見市阿尾島田古墳群を研究対象として取上げ評価をすすめた。阿尾島田A1号墳に関する検討会(平成16・17年度の2回)及び出土遺物の資料調査、またA2号墳の発掘調査を通して、A1号墳(約70mの前方後円墳)については、能登の雨の宮1号墳と同時期か若干古いもので、前期後葉(4世紀中頃〜後葉)頃の築造ということが明らかになった。A2号墳はこれよりやや新しいものである。さらに各地の状況を見ていくと、阿尾島田A1号墳と同時期には複数の地域に60〜70m級の古墳が出現するのに対し、前期末葉頃と推定される柳田布尾山古墳(107.5mの前方後方墳)の段階にはこれに匹敵する古墳は存在しない。よって、柳田布尾山古墳の段階に至りはじめて、広域の地域圏に君臨する大首長が登場すると考えられる。阿尾島田A1号墳は、その前夜を考える上で重要な古墳と評価することが可能になった。また、小平野しか擁さないにもかかわらず、県内最大規模の2つの古墳、つまり阿尾島田A1号墳と柳田布尾山古墳が氷見地域に相次いで造営されるのは、日本海や潟湖、さらには峠道によって能登と通じるという交通・交易の拠点的役割が主要な要因であったものと推定するに至った。これは、富山や能登、さらには日本海沿岸地域における古墳の出現過程を研究する上で、重要な成果と言うことができるであろう。
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