前年度申請により、研究の再構築が認められた本年度は、以下の計画に沿って研究を実施した。 (1)学史の整理……初期貨幣研究に関する文献資料の収集と閲覧を継続し、『日本書紀』と『続日本紀』にみえる7世紀後半の貨幣関係記事を、江戸時代以来の研究者がどのように解釈し、初期貨幣史を構築してきたのか、最古の貨幣をめぐる認識の変遷や通説の形成過程を明らかにし、その成果を日本銀行金融研究所刊『金融研究』に、「日本初期貨幣研究史略:和同開珎と富本銭・無文銀銭の評価をめぐって」と題して発表した。これにより、古和同天武朝創鋳説が登場した時代的背景や、和同開珎和銅元年発行説との論争の経緯、和同開珎を最古の銭貨とする通説の形成過程が明らかになった。 (2)和同開珎の銭文をめぐる研究……和同開珎の読みと、銭文の出典に関する既往の研究を整理し、発行当時の読みが「ワドウカイチン」であること、出典が中国の開元通寳と同じ班固の『東都賦』である可能性を明らかにした。また銭文の意味、は、「天下和同して地珎を開く」と解釈でき、和銅献上を慶祝した改元の詔と同意の銭文であるという新知見が得られた。 (3)(4)古和同銀銅銭の資料収集と富本銭との製作技術の比較研究……資料収集を行い、文献資料を整備したが、実物資料の観察と比較研究を次年度以降も継続する予定である。 (5)和同開珎関係編年史料集稿の作成……共同研究の基礎資料として、平成17年3月10日付けで『日本初期貨幣研究文献目録(稿)』、A4版、本文64頁を刊行した。 (6)初期貨幣出土分布図の作成……全国438遺跡、4800点のデータベース入力を行った。 (7)(8)その他……中国鋳銭関係文献収集は次年度も継続予定。研究集会「和同開珎をめぐる諸問題」の開催は、日程調整の都合で次年度に実施する予定。
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